理想と現実

そもそも理想というのが、完全な状態みたいな意味なので、そこに至ることは非現実的なんでしょう。
歯科医師としての私の理想は、自分が担当した患者さんの歯が悪くならないように、生涯口の中の事で悩まずいられることです。
綺麗事のようですが、せっかく木村歯科に来てもらった患者さんにはもちろん、良い状態で歯を保って欲しいですし、自分が治療した歯は一生もって欲しいです。
しかし、こうやって書いてみると、やはり理想の反対は現実なのです、悲しいですけど。
何度も書いているかもしれませんが、虫歯や歯周病がかなり進行した状態で、そこから何とかしようとしても、長持ちは難しいのです。
ですので、かなり悪化した状態では、がんばってハミガキをしても、治療をしても、いつかはダメになります。
そうならないように、子ども、なんなら赤ちゃんのうちから、予防歯科が実践できると良いのですが、これまた現実にはそういった方は少ないのです。
私は嫌々仕事をしているわけではないですが、歯を抜いたり、削ったりが楽しいわけではありません。それが小さい子どもになら、なおさらです。
小学生くらいになると永久歯が生えてくるわけですが、子どものうちから永久歯にむし歯ができてくるようでは、将来的にはその歯を残すことが難しくなってきます。
以前にも書きましたが、虫歯の治療をした歯は、よほど頑張ってお口の中の環境が改善されない限り、また虫歯になります。それを繰り返すことで、歯が無くなっていくのです。
中には、ハミガキがあんまりでも、虫歯にならない人がいます。「自分は歯が丈夫だー」と思っていると、コワいのが歯周病です。中年や高齢になって、歯ぐきが腫れた、歯が揺れてきた、と気づいた時にはもう遅いかもしれません。
自覚症状が出る前に、対処するから予防なのです。なかなか若いうちから、歯が無くなった時のことを想像するのは難しいかもしれません。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
という格言があります。ここでいう歴史とは他者の経験と考えましょう。入れ歯をしているおじいさんやおばあさんの話を聞いてみれば、「入れ歯はいいよー」という声は聞かないでしょう。歯が無くなって、入れ歯になってから、「もっと歯を大事にしておけば良かった」では遅いのです。
「入れ歯は嫌だけど、インプラントにすればいいんでしょ?」というのも甘い考えです。
一番良いのは天然の歯です。イプラントは、歯が無くなった時の対処としては、おススメの治療方法ではありますが、手入れが出来ない、メンテナンスへ通えない方には勧められません。
ハミガキも、歯医者に通うのも面倒だ、ようせん。という方には、インプラントなどの高額な治療をしても悪くなりやすい、長持ちしないので、もったいないです。
生涯自分の歯でなんでも食べられるようにすることは、実現不可能な理想ではありません。ただし、それは予防歯科の実践ができた場合の話です。理想には至ることが難しくても、あきらめたらそこで終わりです。お互い頑張りましょう。
2022年12月13日 14:54